発酵王国・北陸

富山湾越しに立山連峰を望む雨晴海岸(あまはらしかいがん)の景観は、冬の早朝にはさらに幻想的なものとなる。冷えた大気と温かい海水の温度差により蒸気霧「気嵐(けあらし)」が発生し、霧の中の連峰に日が昇る絶景が現れる。天候が良く、夜の気温が下がった日の翌朝に発生しやすい。

冬の日本海の荒波が沿岸に咲かせる「波の花」は、海水中の植物性プランクトンの粘膜が波によって岩に打ちつけられ泡状になったもの。
海が荒れ、波の高い寒い日に現れる。

大野市中心部の亀山山頂に建つ越前大野城。
秋から春にかけて、雨が降った日の翌朝に発生した霧が晴れ始めると、
国道を挟んだ戌山城(いぬやまじょう)跡付近から天空の城の姿を望むことができる。

生まれ育った故郷の風景は、今もかけがえのない宝物です。

僕を富山県民に戻してくれる故郷の風景

 僕が生まれ育ったのは、富山市中心部です。富山県には素晴らしい風景がたくさんありますが、印象深い故郷の風景はと聞かれたら、まず思い浮かぶのは富山城址公園や松川のほとりですね。幼い頃から遊び場でしたから、春夏秋冬それぞれの景色が目に焼きついています。
 高校卒業後に神戸の大学へ進学し、初めて故郷を離れました。その時、立山連峰や富山湾など身近にあって当たり前だった風景が、実は富山にしかない素晴らしい景色だったんだと実感したんです。その気持ちは東京で暮らしている今も同じです。富山に帰ってきて立山連峰を見ると、それだけで気持ちが地元富山県民に戻っていくんです。忙しくて少し疲れていた時、晴れた日の美しい立山連峰に出迎えられて、その雄大な美しさに思わず涙が出そうになったこともあります。いつ眺めても変わらずに故郷を感じさせてくれる、僕にとって大切な風景です。

俳優として「感動の瞬間」を届けたい

 石川・福井にも思い出の風景があります。石川では無名塾時代に合宿生活をしていた七尾市中島町の海沿いの風景、福井では神戸から里帰りする列車の車窓からの景色が印象に残っています。どちらも、まだ若くて悩み苦しみ、それでも精一杯頑張っていた当時の気持ちを思い出させてくれる、かけがえのない風景です。
 北陸のまだ見ぬ風景にも、たくさん出会いたいと思っています。雨晴海岸の気嵐、能登半島の波の花、天空の城大野城…。どの景色も「幻」というくらいなのでなかなか見られないのでしょうが、ぜひこの目で見てみたいです。その瞬間に立ち会えたなら、きっととても感動するでしょうね。
 さまざまな条件が重なった瞬間にだけ現れる幻の景色って、舞台演劇にも通じるものがあると思います。その日その瞬間のさまざまな要因によって変化するのが舞台の大きな魅力。自然が奇跡の瞬間を僕たちに与えてくれるように、僕もその瞬間にしか出会えない感動を観客の皆さんに届けられる俳優でありたいと思っています。

 

「北陸に行きたい」という言葉が嬉しい

 東京で自分が主演した舞台を富山で公演したい。それが僕の夢のひとつなんです。実は以前に主演した舞台のセットを、普通は壊してしまうのですが、富山で応援してくれている方々や僕の同級生たちがいつか富山で公演できるように、今も保管してくれているんですよ。その気持ちに応えるためにも、いつか故郷で主演として舞台に立つ夢を叶えたいですね。
 もうひとつ目指しているのは、富山をはじめ石川、福井の魅力を全国のたくさんの人に知ってもらうための役割を果たしていくことです。最近は、北陸新幹線の開通を間近に控えて、僕の周囲にも「北陸に行ってみたい」と話している人がたくさんいます。そう言ってもらえることがとても嬉しいんです。
 自然がつくり出す風景、食や文化、そして何よりこの地に暮らす人々。僕の大好きな故郷の魅力を、これからもどんどん伝えていきたいですね。

1975年富山市生まれ。1998年に入塾した無名塾卒業後は俳優として数多くの舞台・映画・テレビドラマに出演、またラジオパーソナリティや執筆活動など幅広く活躍している。現在、地元富山のテレビや新聞でレギュラーの番組やコーナーを持つ。今年12月には主演舞台「gift~星空の向こうから」(吉祥寺シアター)に出演。