細田守さん アニメーション監督/富山県出身
この夏公開の映画『時をかける少女』がアニメーション監督としてのフリー第1作目となる細田守さん。筒井康隆氏の原作から40年、実写映画やテレビドラマなどで何度も映像化された作品が今、アニメという手法で、原作とはまったく違った魅力を持って生まれ変わろうとしています。今を生きる女性の共感を呼ぶ主人公像とは? 制作真っ最中の細田監督に、作品へ向けるご自身の視点を語っていただきました。
子どもだけに向けたアニメじゃ、子どもは観てくれない。

「二代目『時かけ』」を、
原作の筒井康隆さんも認めてくださいました。

 今回の『時をかける少女』は、まず主人公が世代交代しています。原作の主人公は大人になって、新たな主人公の叔母として登場します。で、今回は今どき、どこにでもいそうな元気で素直な女子高生がヒロイン。'83年の映画で原田知世さんが演じたような、ちょっと古風で優等生な美少女ではなくて、もっと活発に走り回っているような女の子です。
 時代とともに女性はどんどん自由になり、すごく多様な生き方を楽しむようになっていますよね。そんな、自分の意志で行動していく今の女性たちの価値観と響き合えるような主人公じゃなくちゃ、観る人の共感を得るのは難しいと思ったんです。誰にでも中学や高校時代、今までとは違う自分を見出す瞬間ってあるじゃないですか。大きな世界につながる扉のとば口に立って、目の前に広がる無限の可能性にドキドキ、ワクワクしているような感じ。そんな感覚を表現したいと思っています。

いろいろあるけど世の中っていいよね、と
肯定的に思える作品に。

 とはいえ実際に大きな世界に飛び出してみると、全然期待とは違ったり、いろいろ悩んだりするものです。でも、それも含めた全部が広い社会への可能性。うまくいかないからってすぐに自分の殻に閉じこもったり、そんな若者をやさしく励ます社会にもなんだか違和感があるんです。僕なんかは「もっと肯定的に世界を見ればいいのに」と思っちゃいますよね。今回の『時をかける少女』では、「タイムリープ」という時空を超える力を持つことで、主人公にはいいことも悪いことも紆余曲折がしっかり用意されている。でも、それをバネに立ち上がって、新しい道へと駆け出していく姿を描きたいんです。高校生はもちろん、昔高校生だった人にも過去の思い出ではなく、今の自分に照らし合わせて元気を受け取ってもらえるとうれしいな。観た人みんなが「世の中って、いろいろあるけど、なんかいいよね」と思えるような作品にしたいですね!

オールターゲットにしたいから、
大人の自分が今思うことをダイレクトに。

 僕たちが子どもの頃って、アニメは「卒業」するものでしたよね。でも今は「ジャパニメーション」といわれるほど日本のアニメのクオリティは世界的にも高い評価を得て、大人も充分に観る価値があるものになっています。アニメに対する社会の見方も確実に変化してきていますよね。それだけに、今意識しているのは「オールターゲット」に向けて発信するということ。別に大人向けにつくろう、というわけじゃなく、世代によって語り口を変えたりはせず、今現在、自分が感じることや答えの出ていない問題をそのまま子どもたちにも「ねぇ、どう思う?」と投げかけてみたい。だってほら、子どもの頃って、大人になったらいろんなことが全部わかって悩みなんてなくなるんだって思ってたりしたでしょう? でも実際はそんなこと、全然ない! 今もまったく変わらないようなことで悩んでたりするわけで(笑)。子どもの中にも、大人の世界をちょっとのぞいてみたいような気持ちって必ずあるし、そこに訴えかけていったほうが結果的に受け入れてもらえると思うんですよね。

実家のある富山や、大学時代を過ごした金沢の
隠れた名所を舞台に描きたいんです。

 今回の『時かけ』の舞台は、東京近郊をたくさんロケハンして創りあげた住宅地。でも最初は、僕の故郷である富山か金沢を舞台にしたいなぁ、と思ってたんですよ。ほら、大林宣彦監督も『時かけ』をはじめ、いわゆる尾道三部作はご自身の故郷だったわけじゃないですか。僕も、実家のある富山や大学時代を過ごした金沢のいいところをいっぱい知っているし、そんなところを舞台にしたいと思ったんです。ただ、『時かけ』でそれをやったら大林さんの尾道とおんなじ手法になっちゃう。だから今回は我慢しました(笑)。
  でも、近い将来にはぜひ実現したいですね。富山のいたち川は、宮本輝さんの小説『螢川』の舞台にもなった美しい場所。その中に紡がれている富山弁もすごく美しい。普段、富山に帰って聞くとホントに田舎の言葉だと思うんですけどね(笑)。金沢ではちょうど大学時代、鈴木清順監督の映画『夢二』のロケが行われてて、楽しみに映画を見たら舞台になってるのは観光地ばっかり。「もっと他にいいところがあるよって、鈴木清順さんに教えたい!」と思いましたよ(笑)。そんなリアルで素晴らしい故郷をいつか描きたいですね。

10年以上勤めた東映アニメーションを離れ、フリーとして新しい一歩を踏み出したばかりの細田監督。とはいえ、肩に力の入った様子もなく、とても自然体で周りの多くのスタッフと楽しみながら、新しい『時かけ』完成へ向けて多忙な毎日を送っていらっしゃるようでした。

細田守さん アニメーション監督/富山県出身
細田 守
アニメーション監督/富山県出身
1967年富山県生まれ。金沢美術工芸大学卒業。1991年東映動画(現・東映アニメーション)入社。テレビアニメの演出や、劇場版「デジモンアドベンチャー」2作品を監督。ルイ・ヴィトンのプロモーション映像などの監督も手掛ける。2005年からフリー。

自転車で遭遇した踏切事故をきっかけに、時間を跳躍する能力を得る主人公・真琴。その力を些細な願望のために躊躇なく使う無邪気さと、やがて学ぶ大切なこと。それが二代目『時をかける少女』の魅力だ。

公式サイト
[http://www.kadokawa.co.jp/tokikake/]

(C)『時をかける少女』製作委員会2006

主人公、紺野真琴の
キャラクターデザイン画
◆◇◆◇◆ 取材こぼれ話 ◆◇◆◇◆

アニメ『時をかける少女』の脚本は、『学校の怪談』などを書かれた奥寺佐渡子さん。「東映アニメーションで偶然奥寺さんの脚本を目にして、とても気持ちのいい本を書く方だなぁと思って」。奥寺さんとともに、今の時代に合った主人公やストーリーの新しい魅力を模索した結果、できあがったのは原作をベースにしながらもまったく違った『時かけ』。「だから、筒井康隆先生にできあがった脚本をお見せするのは勇気がいりましたよ。そのときの反応が、こう腕を組んで唸りながらね、『う〜〜ん、原作と全然違う……………ところが、イイ』なんですよ! 先生らしいパフォーマンスですよね(笑)」。筒井氏から「ようやく二代目の『時かけ』ができた」と、最高の賛辞を贈られたそうです。


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